Youtubeの動画シリーズ「京都・美山の古民家宿から。」ができるまで。
PenのYoutubeチャンネルに、「京都・美山の古民家宿から。」というシリーズがある。この9月からスタートし、先日VOL.4を公開したばかり。京都のはずれ、美山の集落にある築110年の古民家を改装し、一棟貸しの宿を営む夫婦の日々を紹介するシリーズだ。
──なぜ古民家? なぜ美山? そんな疑問を抱く人も多いだろう。この話は、Pen編集部と長年のつきあいがあるバルセロナ在住の写真家、森本徹氏が「日本に帰国して、宿をはじめるらしい」という話が伝わってきたことから始まった。
当の本人、森本氏に連絡を取ってみると、すでにバルセロナを引き払い、スペイン人の妻ティナと開業準備を進めていて、まさに自分たちの手で古民家を改装しているまっ最中だという。
「古民家ぐらし、流行ってますよね。動画にしたら面白んいじゃないですか」
「森本さんって、動画撮れたりするんですか?」
Youtubeチャンネルに力を入れ、好評の「東京古着日和」以外にも新シリーズを、と考えていたわれわれは、そんなふうに前のめりになっていった。
森本夫妻とメールのやりとりがはじまって、徐々に写真が送られてくる。なかなか全貌は見えないが、かなり立派な一軒家だとわかってくる。ふたりで工具を使いこなし、作業する様子が動画で送られてきたりして、素敵な宿が完成する予感が広がっていった。
そして7月。緊急事態宣言がようやく明けたタイミングで、動画ディレクターを道連れに京都美山へと足を運んだ。われわれを迎えてくれたのは、「京都のめっちゃ山奥にある一軒家」と、飾らず心地よい森本夫妻のおもてなしだった。
いまは金属板で覆われているかやぶきの屋根裏にのぼり、森本氏がさばいたしめ鯖を味わい、だだっ広い和室の真ん中に布団を敷いて夜を過ごし、束の間、ふたりの暮らしを体験した。そして、心は決まった。ふたりの宿とくらしぶりを伝える動画をつくってみようと。
数ヶ月が経ち、試行錯誤しながらもシリーズがスタート。この12月にVOL4までたどりついた。Youtube的にはやや地味だし、大人しい内容だと思う。100万回再生ははるかに遠いが、それはこの宿に流れるおだやかな時間、ふたりの人柄の表れでもあるわけで、それこそが魅力なのだと感じている。
月に一度ほどの更新ということもあり、伝えられていないことがたくさんある。「かやぶき屋根」の秘密や、夫妻が暮らす素敵な別棟。蔵を改装したフォトスタジオ。そして、豊かな自然に包まれて、季節ごとにかわっていく美山の日常。VOL.5以降でも引き続き紹介していくので、ぜひ一人でも多くの方に見てもらいたい。
……こんなことを言うと失礼かもしれないが、ふたりの暮らしを追いかけ続けて何十年か経ったとき、この夫婦が美山でのんびりと幸せに暮らす、おじいちゃんとおばあちゃんになっていたら、最高に素敵じゃないだろうか。そんなふうに思っている。(編集KI)
【カーサ美山】
■VOL.1 スペイン人の妻とふたりで、かやぶきの宿をはじめました。
■VOL.2 初めてのお客さんと、この夏のできごと色々。
■VOL.3 あらためて、ティナのことを紹介します!
■VOL.4 スペシャルゲストと、この秋に美味しかったもの。